どろ亀さんについて

どろ亀さんの略歴などを紹介します

「森が豊かであれば、
人の心も豊かなのだ」

豊かな森

 

どろ亀さんの紹介

 どろ亀さんこと高橋延清東京大学名誉教授は、北海道富良野市にある東大北海道演習林(約2万3千ヘクタール)の林長として、長きにわたって林学の研究とその実践に専念し、世界有数の美林、持続的に発展する森林として評価されるまでに育てた。国道38号線沿いにある「樹海碑」からはその約半分が展望でき、見事な針広混交林がひろがっている。

 どろ亀さんの森づくりの手法「林分施業法」は、現在も演習林で実践、研究が引き継がれており、その内容は「生育する樹木の密度や種類、大きさ、天然更新の良否などによって森林をいくつかのタイプ(林分)に区分し、各林分の状態に応じて伐採や植え付け、保育といった作業(施業)を行う方法のこと」(*1)である。この林分施業法は6原則で成り立ち、その応用は面積や自然林、人工林を問わず活かすことができる。

 どろ亀さんは、東大本郷の教壇に一度も立たなかった教授としても知られている。「森こそが教室」と現場主義、実学を貫いた教育者でもあったどろ亀さんは、数多くの優秀な人材の糧となった。
 定年退官後は緑化の啓蒙活動に精力的に行動した。緑維新(グリーンルネッサンス)、北海道ボランティアレンジャー山川草木を育てる集い、北上市みちのく民俗村村長、各地の植樹祭、自然観察会、テレビやラジオ出演、著書の出版などなど。
 2002年に死去されるまで、中国に木の化石を見に行きたい、羊蹄山に虹をかけたい、シベリアの永久凍土の融解が心配だから見に行きたいと、夢を馳せていた。

*1:『樹海をゆく-富良野・東京大学演習林の森づくり-』東京大学演習林出版局2014

「どろ亀さんについて」イメージ

略歴

1914
(大正3)年
岩手県和賀郡沢内村出身
1930
(昭和5)年
岩手県立黒沢尻中学校卒業
1934
(昭和9)年
弘前高等学校理科甲類卒業
1937
(昭和12)年
東京帝国大学農学部林学科卒業
1938
(昭和13)年
同学部助手として、北海道演習林に勤務
1942
(昭和17)年
同演習林、林長となる
1943
(昭和18)年
東京帝国大学農学部助教授
1954
(昭和29)年
東京大学農学部教授、同9月から翌年2月まで欧米視察
1965
(昭和40)年
東京大学大学院生物系研究科担当
1974
(昭和49)年
定年退官後、東京大学名誉教授となる
2002
(平成14)年
1月、死去。

主な受賞歴

1968
(昭和43)年
第12回 林木育種賞
1969
(昭和44)年 
富良野市長表彰(教育文化功労)
1974
(昭和49)年
北海道新聞文化賞(科学技術賞)
1976
(昭和51)年 
林政記者倶楽部賞 第17回グリーン賞
1983
(昭和58)年 
第1回 朝日森林文化賞(森づくり部門)
富良野市特別功労章
1987
(昭和62)年 
勲三等旭日中綬賞(教育功労)
1992
(平成4)年 
日本学士院エジンバラ公賞
1996
(平成8)年
第7回 みどりの文化賞
1999
(平成11)年
北海道功労賞(天然林育成の研究と森づくりを通した文化の振興)

主な役職

1958
(昭和33)年
北海道林木育種協会理事
北海道林業経営協議会委員
1959
(昭和34)年
北海道林木育種協会理事長
1964
(昭和39)年
北海道自然保護協会理事
1965
(昭和40)年
北海道森林審議会委員
1967
(昭和42)年
北海道林業構造改善審議会委員
1968
(昭和43)年
日本林学会評議員
北海道総合開発委員会臨時委員
社団法人北方林業会理事
1971
(昭和46)年
北海道林業構造改善審議会会長
1973
(昭和48)年
財団法人日本緑化センター理事
北海道開発審議会特別委員
1974
(昭和49)年
社団法人北方林業会会長
北海道林木育種協会会長
北海道自然環境保全審議会委員
1981
(昭和56)年
北海道林業振興審議会委員
北海道有林野経営審議会委員
1982
(昭和57)年
北海道森林審議会会長
1983
(昭和58)年
社団法人北方林業会理事
1985
(昭和60)年
緑の文明学会設立に尽力・顧問
1986
(昭和61)年
北海道林木育種協会理事
1987
(昭和62)年
グリーンルネッサンス代表委員
森林浴の森全国協議会顧問
1988
(昭和63)年
社団法人北海道国土緑化推進委員会・
北海道森林基金推進会議委員
1989
(平成元)年
緑の文明学会会長
北海道ボランティアレンジャー「山川草木(さんせんそうもく)を育てる集い」顧問
1990
(平成2)年
日本の滝全国協議会顧問
1992
(平成4)年
岩手県北上市立野外博物館「みちのく民俗村」初代村長
1993
(平成5)年
自然・文化創造工場(C.C.C)工場長
1997
(平成9)年
緑の文明学会 名誉顧問

主な著書および著作

1971
(昭和46)年
『林分施業法─その考えと実際─』〔全国林業改良普及会刊〕
1972
(昭和47)年
科学映画『樹海』(第1部/北国の森林 第2部/天然林を育てる)
1984
(昭和59)年
『樹海に生きて─どろ亀さんと森の仲間たち─』〔朝日新聞社刊〕〔講談社文庫〕
1986
(昭和61)年 
『札幌の樹々 第3章 樹の造形美』〔札幌市教育委員会編集・刊・さっぽろ文庫〕
1988
(昭和63)年
『詩集・どろ亀さん』〔緑の文明社刊〕
1992
(平成4)年
『森に遊ぶ─どろ亀さんの世界─』〔朝日新聞社刊〕
1994
(平成6)年 
仏教№28『森の哲学』〔法蔵館 〕
1996
(平成8)年 
『対訳詩集・どろ亀さん』〔弘園社刊、C.W.ニコル英訳〕
1999
(平成11)年 
『樹海 ─夢、森に降りつむ─』(世界文化社刊)
2001
(平成13)年
『林分施業法【改訂版】─その理論と実践─ 』(自費出版)
2003
(平成15)年
『どろ亀さん、最後のはなし』(新思索社)

書籍、雑誌などで紹介

1984
(昭和59)年
春秋社 米村晃多郎 著 『北の肖像シリーズ 森の人─どろ亀さん─』
1984
(昭和59)年
(財)森林文化協会グリーンパワー 畑 正憲氏
『北の森のすてきな人びと どろ亀さんへの恋文』 新潮社 三島昭男 著『危うい緑の地球』
1986
(昭和61)年
LOOK JAPAN3月号『Building a Forest』(韓国語訳で韓国日本大使館広報誌にも掲載)
1986
(昭和61)年
新潮社 三島昭男 著 『森からのメッセージ 第6章「どろ亀」さん』
1986
(昭和61)年
佼成社 高橋 健 著 ノンフィクション・シリーズ
かがやく心『森のメルヘンをおいもとめて ─東大演習林を育てた高橋延清─』
1988
(昭和63)年
林野庁 第一プランニングセンター 絵本『人がつくった天然の森』
1988
(昭和63)年
日本放送出版協会 『授業 1 ─母校の教壇に立って─第1巻』
1989
(平成元)年
講談社 橋本克彦 著 『森に訊け─森と語る名物教授の悟り─』
1990
(平成2)年
世界文化社 稲本 正・姉崎一馬 共著 『森の旅 森の人 ─富良野─』
1990
(平成2)年
柏樹社 今田求仁生 著 『愚者の智恵─森の心の語り部たち─』
1991
(平成3)年
柏樹社 今田求仁生 著 ブックレット《いやしの泉2》 『杜のまなざし いのちの風景』
1993
(平成5)年
筑摩書房 中野孝次 編『清貧の生きかた』 新潮社 白洲正子 著『夕顔』
1995
(平成7)年
小学館 サライ 16 『サライ・インタビュー』
2009
(平成21)年
北海道新聞社 『モーリー20号』